研究だけでは見えない「眠れない」の正体

先日岡山で開催された全日本鍼灸学会で睡眠に関する研究発表を行いました。

今回の発表では、昨年当院でモニターを募集した睡眠改善鍼灸に興味を持って来院された患者さんを対象に、アンケートと「アテネ不眠尺度」を用いて、どのような特徴を持った方が来院されているのかを調査しました。
発表を終えた今、改めて感じていることがあります。それは、

「眠れない」という一言だけでは、その人の本当の悩みは見えてこない

ということです。

同じ「眠れない」でも悩みは違う

睡眠の研究では、睡眠の状態を見える化するために様々な評価尺度が使われます。
今回私が使用した評価尺度はWHO作成した「アテネ不眠尺度」を使用しました。

・寝つくまでの時間
・途中で目が覚める回数

を細かく調べるものは使えない(どのスケールを使うかも調べたり検討を続けていました)
アテネ不眠尺度では
・睡眠時間
・日中の眠気
などを数値化することで、睡眠の状態を客観的に把握します。
これは研究を行う上で非常に大切なことです。
ですが、実際に患者さんと向き合っていると、数字だけでは見えてこないものがたくさんあります。

例えば、「夜中に何度も目が覚める」

という同じ症状でも、ある方は

「何度も目が覚めてしまうから、翌日、仕事の集中力が落ちて困っている」

と話しまた別の方は

「休日も疲れが取れず家族との時間を楽しめない」

と話されます。さらに別の方は

「このまま体を壊してしまうのではないかと不安になる」

という同じ睡眠の問題でも、その背景にある悩みはまったく違うのです。

私が知りたいのは「何時間眠れたか」だけではない

睡眠改善鍼灸を始めてから、多くの方のお話を聞いてきました。

そこで感じるのは、

本当に知りたいのは「何時間眠れたか」だけではない

ということです。

私が知りたいのは、

「眠れるようになったら何がしたいですか?」

ということです。

旅行を楽しみたい。

仕事に集中したい。

朝スッキリ起きたい。

子どもに優しく接したい。

趣味を再開したい。

眠れないことに悩んでいる方のお話を聞いていると、その先には必ず「こう生きたい」という願いがあります。

睡眠は目的ではありません。

その人らしく生活するための土台なのです。

今回の研究で見えてきたこと

今回の研究では20名以上の患者さんにご協力いただきました。

一人ひとりのお話を聞きながら、アンケートや評価尺度を用いて経過を追いました。

普段の臨床では、

「この患者さんはこういう方」

という個別の理解になります。

しかし複数の患者さんを同じ方法で見ていくと、これまで気づかなかった共通点が見えてきます。

これは研究をしてみて初めて実感したことでした。

町の鍼灸院で日々患者さんと向き合っていると、一人ひとりを深く知ることはできます。

一方で、研究という形で整理することで、個人の経験だけでは見えなかった全体像が見えてきます。

今回の学会発表では、その取り組みを評価していただく機会にもなりました。

町の鍼灸師だからこそできる研究

学会には大学の先生や研究者の方も多く参加されています。その中で私が感じたのは、町の鍼灸師だからこそできる研究があるということでした。大学では大規模な研究ができます。病院では医療機関ならではのデータが集まります。しかし、私たちには、患者さんの日常に寄り添いながら継続的に関わることができます。

「最近どうですか?」

という何気ない会話。試験的な調査というより、患者さんとの物語を紡ぐような調査。
眠れないという不調がその人にどういう困り事をもたらしているのか、そして、鍼灸で出来る事は何か。

施術を重ねる中で見えてくる変化。数値には表れない患者さんの表情。そうしたものを丁寧に積み重ねていくことも、立派な研究の種になります。
そんなことを今指導いただいている大学の先生に教えてもらった気がします。

私はこれからも現場だからこそ見えるものを大切にしていきたいと思っています。

眠れないことを我慢していませんか?

睡眠に悩んでいる方の中には、

「病院へ行くほどではない」

「検査で何か見つかるのが怖い」

「薬に頼りたくない」

と思っている方も少なくありません。

実際に当院へ来られる方からも、そのようなお話を聞くことがあります。

もちろん、必要な場合には医療機関での検査や治療が大切です。

一方で、

「まずは今の状態を誰かに相談したい」

「自分の話を聞いてほしい」

そう思っている方もいらっしゃいます。

睡眠の悩みは、数字だけでは測れません。

だからこそ私は、施術の前にお話を聞く時間を大切にしています。

何に困っているのか。

どんな毎日を送りたいのか。

眠れるようになったら何をしたいのか。

そこに耳を傾けることから治療は始まると考えています。

来年の学会へ向けて

今回の発表はゴールではなくスタートです。継続した治療がどういう変化をもたらしたのか、は来年の発表です。ちゃんとまとめられるかしら・・・という不安はありますが、協力してくれる先生方が優秀すぎるから、きっと大丈夫でしょう!私ももっと成長できるはず!(と言い聞かせてます。笑)

発表後も継続して治療を受けてくださっている患者さんがいらっしゃいます。

また新たな患者さんとの出会いもあります。

今回見えてきたことをさらに深めながら、来年の学会ではより発展した形で発表できるよう準備を進めていきたいと思っています。

そして何より、この研究は私一人ではできませんでした。

ご協力いただいた患者さんお一人おひとりに、心より感謝しています。

これからも「眠れない」という悩みの奥にある、その人らしい人生に目を向けながら、睡眠改善鍼灸に取り組んでいきたいと思います。

もし今、眠れないことを当たり前だと思っている方がいたら、一度ご相談ください。

眠れるようになることはゴールではありません。

その先にある、あなたらしい毎日を取り戻すための第一歩なのです。

学会にはオンラインサロンここちめいどのメンバーも一緒だったのでとても心強かったです!
色々準備することで見えてくる気づきや学会で学んだことをサロンでの臨床の場でも活かしていきたいと思っています。

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