暑い夏が過ぎて、なんとなくだるい・調子が出ないという方が増えています。
季節の変わり目は、体も心も少しお疲れ気味。
鍼灸師としては、こんな時期こそ「治療をしすぎないように気をつける」ことが大切だと感じています。
「え?治しすぎない?どうして?」と思われる方もいるかもしれませんね。
今日はそんな“やりすぎない鍼灸”について、少しお話ししたいと思います。
鍼灸を受けたあと、「なんだかだるい」「いつもよりしんどい」と感じたことがある方もいるかもしれません。
いつもは平気なのに、今日は鍼が合わないのかな…?と不安になる方もいらっしゃいます。
(そういう時は、遠慮なく教えていただけるととても助かります。その日の体調に合わせて調整できますので☺️)
また、頭痛で鎮痛剤を飲んでも効かない、胃痛で薬を飲んでもスッキリしない…
そんな時、つい「何かできることはないか」とネットで調べたり、検索結果を見て不安になったりしませんか?
“何とかしたい”という気持ちが強いほど、頭も体も緊張し、目の疲れや浅い眠りにつながることがあります。
鍼灸を受け慣れてくる頃に多いのが、「体が疲れていることに気づいていない」状態です。
予定を詰め込み、無意識にがんばりすぎている方。
そういう方ほど、自分の体や心のサインに鈍感になりがちです。
「心頭滅却すれば火もまた涼し」タイプの頑張り屋さん。
頑張ることは素敵なことですが、ずっと頑張り続けられる人はいません。
車だって、エンジンをふかし続けたら壊れてしまいますよね。
疲れがたまると、体の変化にも気づきにくくなります。
ある日突然不調が出たように感じても、実はその前から疲労は積み重なっているのです。
そんな状態のときに強い刺激で治療してしまうと、体が“オーバーラン”してしまいます。
治療直後はスッキリしても、すぐにシャットダウンしてしまう。
だからこそ、まずは「休める体」に戻していくことが大切なんです。
鍼灸のあとはのんびり過ごすこと。
自分に優しくすること。
それが、いちばんの回復になります。
真面目な人ほど、自分の体にムチを打って働いたり、家事を頑張ってしまいます。
でも鍼灸のあとに出る“だるさ”や“眠気”は、体が「もう休んでね」と出しているサイン。
無理に動かず、安心してダラダラしてくださいね。
買い物や美味しい食事、友達とのおしゃべりもリフレッシュになりますが、
時に体に負担をかけていることもあります。
誰かと比べたり、誰かの期待に応えようとしたり、
「今の自分をなんとかしよう」と頑張る気持ちが、外向きすぎていることもあるんです。
たまには、ベクトルを“自分の内側”に戻してあげましょう。
「いまの私はどう感じている?」
そんなふうに、自分に優しく問いかけるだけでも、体は少しずつ緩みます。
若い頃の私は、「患者さんの期待に応えたい!」という気持ちが強くて、
ついガッツリ治療をしてしまっていました。
患者さんがだるくなっても、「これは良い反応だから大丈夫」と思っていたんです。
でも今は、できるだけ体に負担をかけない治療を心がけています。
「今日はあまり変わらなかったかも」と感じる日もあるかもしれません。
でもそれは、体が自分の力でゆっくり回復できるように、
**“添え木のようにそっと支える刺激”**で整えているから。
折れた植物の枝に添え木をして、植物の力で回復を待つように──
そんなやさしい鍼灸でありたいと思っています。
忙しい日々の中で、立ち止まって、自分の体の声を聴く。
そのお手伝いをするのが、私たち鍼灸師の役割だと思っています。
🌿がんばるあなたへ
鍼灸の時間は、「治す時間」ではなく「整える時間」。
どうか安心して、ゆっくり休んでくださいね。
